『山口啓介 後ろ向きに前に歩く』広島市現代美術館

広島MOCAで3ヶ月ロングラン展示(6月8日~9月4日)の『山口啓介 後ろ向きに前に歩く』が始まった。
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残念ながら私はこの作家さんは存じ上げていない。しかし、タイトルが面白いのとゲーテ三木茂夫に感化を受けて創作したという作品もあるということで興味を持っていたので、作家本人のギャラリートークも聞きたいと思い初日に行ってきました。

タイトルが面白い、『後ろ向きに前に歩く』については中国新聞の天風録(6/8付け)にも採り上げられていましたが、やはりタイトルを見ただけでも興味を覚えます。後ろになった過去のことは分かるが、将来のことは全て不確定で分からない。それでも一歩一歩前に将来へ向けて歩んでいく(創作していく)のだということから来ているようです。

エッチングなど版画が専門なのかと思っていましたら、エッチングをやっていたのは最初期の2年間くらいだそうです。その時に創作したエノラゲイをモチーフした作品「Calder Hall Ship - ENOLA GAY」は大型の組版画ですが、迫力もあり説明を聞かなくても何か胸を打つものがあります。
しかし、作家自身の創作裏話を聞くと、そうか!だから気が伝わってくるのかと納得。

それは、20代でアメリカ留学していた時、アメリカの学生に「エジソンの発明を筆頭に、世界で初めてというものは殆んどアメリカが創って世界に寄与している、あの原子爆弾もだよ!」と自慢げに言われたことがきっかけで、当時北朝鮮の原子爆弾製造基地の映像が報道されていたことも重なり、あのエッチング作品を作ったそうです。
船は、日本は原発のウラン処理を船でフランスなどに運び処理していますが、その船のようです。(私は第五福竜丸がモチーフかなと思っていました。)こぶのように出ているのはアメリカやヨーロッパの原子力発電所は、冷却装置がプリンのような山型になっていることでああいう形にしたそうです。
アメリカの学生は、日本人だからと、わざと言ったのではないでしょうが、これ常識でしょうという感じの一言が、日本人の美術家・山口啓介の”なにー!”という気持ちがそのまま創作になったのでしょう。

ご本人も言われていましたが、山口啓介氏は、戦争も知らない、日本もかなり裕福になった時代に大きくなり、新人類とか言われた世代の人です。また、広島で原爆の生々しい話を見聞して育った環境とも無縁ですが、あのような観念的ではなく内面から発するような作品を作り上げられたことは、エッチングという技法と大きさも手伝い、見事に良い作品になっていると思います。

地下の展示室では、3.11福島からの日記やエスキース的なものなど、展示されています。
すでに瀬戸内芸術祭で発表された作品もありますが、私が思いますに、山口啓介氏は何かこれからも原発や原爆に係る作品を創作されるのではないかと。2年後、3年後にまた広島MOCAで作品を見ることができれば、是非見たいと思っています。

時間がなくて駆け足で見て帰ったのですが、常設展も考えた展示がされていて、見ごたえがあります。

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